(2022.09.16-9.17) 日本科学教育学会第46回年会

 9/16-18の3日間で開催されている日本科学教育学会第46回年会に2日間参加した。私は、非会員であるが、9/17のシンポジウム登壇者として年会の参加権を得ていた。同期間に日本教師教育学会の全国大会が開催されており、9/16の課題研究と9/17のシンポジウムという限定的な参加となった。

 9/16の課題研究は、「中等教育カリキュラムにおけるプロジェクト型学習のあり方の研究」のセッションに参加した。3件はドイツにおける実践や研修に関するもの、2件は日本の総合的な探究の時間に関する課題について報告された。日本における課題について翌日のシンポジウムで問題提起することと直結するものであった。

 9/17の午後に開催されたシンポジウム「科学教育における評価の改善」では登壇・発表を行った。同僚の御園先生がコーディネーターであったことから、本学の大学ホールから参加した(9/19に予定されているジュニアドクター育成塾開講式の事前リハも兼ねていた)。
 御園先生から、2017年の学習指導要領改訂以降、評価が問い直されている背景を確認した上で、話題提供に進んでいった。

・科学教育におけるパフォーマンス評価:「探究的な学習」に焦点を合わせて
 西岡 加名恵(京都大学)
・科学教育におけるプロジェクト・ベース学習と学習評価
 深見 俊崇(島根大学)
・理科教育の立場から考える評価と学習指導
 松浦 拓也(広島大学大学院人間社会科学研究科) 
・数学的モデル化における「定式化」と「解の解釈・評価」に関する評価方法
 平林 真伊(山形大学)  ※ご欠席
・SSH 事業で始まった科学課題研究の学校教育での役割
 秋山 繁治(山脇学園中学校・高等学校) 

 まず、京都大学の西岡先生からパフォーマンス課題等これまで取り組まれてきた研究・実践を紹介があった後、「探究的な学習」に焦点化され、ルーブリックの活用等の話題提供がなされた。

 続く、私の発表については、少し丁寧に説明したい。プロジェクト・ベース学習が諸外国において進む背景として、高校の「物理」と物理学者の「物理」に顕著に見られるより「真正」な実践を志向する動きが明確にあることを示した。それを確認した上で、Thomas(2000)のプロジェクト・ベース学習の5つの要件を示し、それを具現化する例としてWatervilleにおけるサバクツノトカゲの追究とBuild San Fransisco Instituteの建築事務所で数学を学ぶ事例を紹介した(いずれも『パワフル・ラーニング』所収)。前者については、プロジェクトを通じて様々な教科を総合的に学ぶ事例となっていた。
 このようにプロジェクト・ベース学習の概要を押さえた上で、その学習評価を事例と考え方の2点から説明した。プロジェクト・ベース学習がカリキュラムの基本となっているHigh Tech Highの10年生が取り組んだThe Maritime Projectは、実際の航海体験等も行うプロジェクトであったが、英語(国語)、米国の歴史、数学、生物のスタンダードが設定され、それらをプロジェクトを通じて学んでいた。プロジェクトを通じて各教科を学ぶことから、企画時点で綿密に評価計画を組むことが求められる。また、改善のためのフィードバックは評価しない、何を評価するかは児童・生徒と共通理解を図ること(assessment for learning , assessment of learning)、個人とグループの評価を予め構想すること(あくまでスタンダードの到達は個人)を確認した。この点、科学を専門としない部分をいかに評価するか、プロジェクトにあたっては協働で行われるかが質疑で挙げられたが、まさ複数の専門性をもつ教師が協働して進めることが重要なのである。

 松浦先生は、理科教育に関して、学習指導要領における資質・能力として押さえるべき視点を紹介し、児童・生徒が理科に興味をもつ(一方で遠ざかる)要因についてアンケート調査の結果を示して頂いた。そこには男女での差が見られ、ジェンダーの視点から検討する必要性が確認された。
 最後に、秋山先生からは、女子校のSSHにおける実践例を紹介して頂いた。高校生が大学の研究者や女性の大学院生とつながったり、研究成果が学会等で評価されたりする優れた取り組みであった。本発表の内容については、秋山先生のResearch mapのページに掲載されている。

 Webinarの形式で単発の質疑となったためフロアの受け止めについてはなかなかわかりにくかったが、科学教育という視点で学習評価を検討する視点を幅広く検討できたことについては非常に有意義だったと感じている。

カテゴリー: プロジェクト関連情報, 研究関連情報 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください