『教師のレジリエンスを高めるフレームワーク』について

 2020年9月に北大路書房より『教師のレジリエンスを高めるフレームワーク』を公刊した。
 本書は、科学研究費補助金基盤研究(C) 「日本における教師のレジリエンス形成に 寄与するプログラムの開発」(研究代表者:深見俊崇・課題番号: 17K01127) で取り組んできた共同研究の取り組みから生まれたものである。


 教師のレジリエンス研究については、私も翻訳に携わった『教師と学校のレジリエンス: 子どもの学びを支えるチーム力』(北大路書房)が日本において初めてそれを世に問うたものとなる。この中では、心理学におけるレジリエンス、そして教師のレジリエンスに関する諸研究のレビューや教師のレジリエンスを考えるための職場や関係性のあり方を提起されており、教師のレジリエンスを考えるための指針となる一書となるだろう。
 この本の原著が出された当時から研究の進展として、レジリエンスを形成するための具体的な学習にシフトしつつある。とりわけ、オーストラリアのマンスフィールド氏らが開発した教師のレジリエンスを形成するためのオンライン学習プログラム”BRiTE”は、海外の研究者からも着目されてきた。この内容が英語であること、オンラインの学習コンテンツよりも、書籍の方が日本ではアプローチがしやすいこと等から、書籍化の方向で検討を進めてきた。
 本書の執筆にあたって、BRiTEの内容をそのまま翻訳するのではなく、構成要素である”B”(レジリエンスの形成)、”R”(関係性)、”i”(ウェルビーイング)、”T”(主体性を保つこと)、”E”(感情)のフレームワークを基盤としながら、日本の学校現場での実態に即した内容として0ベースで編み直すことを心がけた。もちろん、BRiTEの方向性と日本のそれとのギャップがある場合については、日本の発想にはない視点も盛り込んでいる。
 教師のレジリエンスを形成するためには、具体的にどのような内容を学習すべきなのか、どのようなアクションを起こすべきなのかを、本書の内容とワークから学べるようになっている。教員養成段階でも、現場で働く教師にとっても是非手に取って読んで頂きたい。

 出版を記念して、Zoom等でのアクセスも容易になりつつあるため、以下の部数をまとめて購入して頂いた方に講演料なしでオンラインでの解説もしくはディスカッションベースのプログラムを実施していきたい。感染拡大地域でなければ現地で行うことも可能であるが、その際には、交通費・宿泊費は依頼者の負担となる。

・15部以上 1時間程度の本書の解説と質疑応答
・30部以上 2時間~2時間半程度、本書の解説を交えつつ、グループワークで学ぶ
 グループワークについては、昨年度の科研で取り組んできたレジリエンス形成プログラムをベースとなる。

 私が窓口となるが、書籍の販売については北大路書房と直接行う形になる(著者からの購入となるため一定の著者割引を含む)。参加者に対する書籍の受け渡し、Zoom等の設定、グループの構成については、依頼主にお任せする形になることも合わせてご確認頂きたい。

 本件についての問い合わせは、以下のフォームから。

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    『パワフル・ラーニング』発売開始

     5/26に編訳本『パワフル・ラーニング』が一般発売された。原著に出会ってから、大変素晴らしい本で何としても翻訳したいと思っていた。
    2015年に出版社との交渉を開始し、2016年度約1年間をかけて共訳者と共に翻訳を進めてようやく実を結んだものである。
     オビにある「表層的で形骸化されたアクティブ・ラーニングを超えて」はあえて付けてもらったものだ。世に飛び交う「アクティブ・ラーニング」を批判的に検討する鏡となる一書であることは間違いない。

     学習科学の知見等、数百の先行研究に基づいて指導方略、カリキュラム、評価のあるべき姿を描き出している。日本における「アクティブ・ラーニング」に関する文献でこれだけの先行研究を紐解いた文献は皆無に等しいだろう。
     特に今の「アクティブ・ラーニング」が指導法や形態のレベルの議論が中心になっている中、本書の核は「学問」(教科)の本質から考えることがテーマとなっている。
     とりわけ「数学教育」や「科学教育」が国際的にいかなる観点で論じられているかは、日本における教科教育の問題点を浮き彫りにするものであるだろう。

     学習指導要領改訂において「社会に開かれた」というキーワードが掲げられているが、本書の核は「真正性」である。「社会に開かれた」というテーマを考えるにあたって、「真正の活動」「真正の学習」「真正の評価」とは何かがわかる具体的な事例が本書にはふんだんに盛り込まれている。
     「真正性」は日本でもこれまで紹介されてきた言葉であるが、本書を読めば次元が違うものだと分かるはずだ。日本の「教室」や「授業」で取り上げられてきた「文章題レベル」の「現実」ではなく、例えば科学を学ぶためには「科学者」にならねばならないことを本書は示している。
     それに関する探究ベースの具体例がいくつも紹介されている。日本でもプロジェクトベースの実践があるが、本書で実践されているレベルのそれはどこまであるだろうか。

     『21世紀型スキル』等類書もあるが、本書の優れた点は、児童・生徒の実践の具体が見えることである。本書は、Edutopiaと連動したものであり、実践の様子を動画で見ることもできる。動画は英語であるが、教室環境や実践のイメージがつかめるというのはこれまでにないものだと言える。
    ☆動画一覧についてはこちらのページから 『パワフル・ラーニング』動画一覧

     訳書としての特色の1つが、訳註である。可能な限り訳註を本文に入れており、本書の内容理解を促すように心がけている。
     もう1つの特色が索引である。本書のキーワードに関して索引で取り上げただけでなく、それらが掲載されたページに関してはほぼすべて参照できるようにした。例えば、「カリキュラム」という語は頻出しているのだが、それが登場するページを網羅している。それゆえ、カリキュラムがどのような文脈で用いられているかが索引からも掴むことができる。
     そして、編訳者として「はじめに」と「おわりに」も紙幅をとり、本書をどう位置づけ、これからの教育において何が求められるのかを論じたのも特色の1つとして挙げられるだろう。

     まず本書を手に取って頂き、そこに広がる豊かでクリエイティブな学びの世界、子どもたちの可能性等を読み取ってもらいたい。本書を読めばワクワクするような学びの楽しさを感じることができるだろう。

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    (2023.03.16) 鳥取大学日本語予備教育コース閉講式

     3/16の13時から約30分、鳥取学日本語予備教育コース閉講式にZoomで参加した。来年度から1年間、海外研修生を1名受け入れることになっている。学習の成果として挨拶を行ってくれたが、半年の努力が垣間見られた。
     来年度からいよいよ本格的な活動がスタートするのでよりよい方向に進めていきたい。

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    (2023.03.15) 学習評価部会ミーティング

     2023/3/25・26で日本教育工学会春季全国大会が東京学芸大学で開催される。重点活動領域の3部会がそれぞれセッションを持つことになっており、学習評価部会は以下のような内容を企画している。

    重点活動領域セッション(学習評価部会)2023年03月25日(土) 15:30〜17:20
    ・登壇者:深見俊崇(島根大学)・泰山裕(鳴門教育大学)・益川弘如(聖心女子大学)・大浦弘樹(東京理科大学)
    ・内容: まず,2022年度に学習評価部会で行ってきた研究会の概要を確認した上で,学習評価研究における展望について概説していきます.そして泰山先生(鳴門教育大学)から,教科等横断的な能力の育成・評価のために開発した Can-do Statementsと,それを基にした指導と評価のパッケージについてご提案いただきます.それを基に特に初等・中等教育における学習評価のあり方について参加者の皆さんと共に議論を行います.

     3/15の18時から1時間ほど、登壇者4人で当日の進め方やディスカッションの方向性について協議を行った。当初、色々悩んでいたところはあったが、皆さんとのディスカッションによってよりよい方向にまとめることができた。
     当日、会場に足を運んでいるならば是非ご参加頂きたい。
     

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    (2023.03.13-14) 島根県立大学松江キャンパス集中講義

     島根県立大学松江キャンパスで「教育方法学」の集中講義を3/13、14の2日間担当した(中・高・栄養教諭免許取得者向け)。3/13については、大学院のⅢ期入試が行われたことで急遽オンデマンドに切り替えて実施した。主な内容は以下の通りである。

    (3/13 オンデマンド)
    第1回:教授・学習の原理と構造1
     3つの学習観(行動主義、認知主義、(社会的)構成主義)を押さえた上で、そのうち行動主義と認知主義について取り上げた。
     客観的に観察可能な「行動」に焦点を当てる行動主義の基本的な考え方を紹介した上で、オペラント条件づけを動画を交えながら確認した。スキナーは、それを人間の学習に応用し、プログラム学習を提唱したことを押さえた上で、e-learning等にも現在応用されていることを紹介した。
     人間の情報処理過程に着目する認知主義については、スキーマとスクリプト、熟達(エキスパート/ノービス)というキーワードについて、事例を踏まえながら確認していった。

    第2回:教授・学習の原理と構造2
     構成主義に説明した上で、特に社会的構成主義を取り上げた。最近接発達領域、足場かけ、正統的周辺参加の3つを主に取り上げ、学習における他者の必要性と共同体の重要性について確認した。それらの視点を踏まえ、アメリカの講義(サンデルの正義論)と日本の大学の授業との差異を検討してもらった。
     それから、外発的動機づけ/内発的動機づけと興味の重要性について確認した。

    (3/14 対面)
    第3回:教授・学習の形態と様式
     本時では、「真正の評価」を主に取り上げた。まず、「真正」とは何か、どのような評価のあり方が批判されてきたのかを確認した。そして、職場に埋め込まれた学習として、ある職場紹介の動画から、各教科等の内容を読み取ってもらった。また、プロジェクト・ベース学習の事例としては、『パワフル・ラーニング』にも掲載されているウォータービルにおけるサバクツノトカゲの調査に関するものを紹介した。
     ARCSモデルについても、解説を行って、ワークに取り組んでもらう予定にしていたが、ワークについては時間切れとなった。

    第4回:情報活用能力の育成とICT活用
     GIGAスクール構想にいたる情報教育・ICT活用の推進を概説した上で、GIGAスクール構想で求められる方向性について確認した。また、教育の情報化に関するデータから、学校現場が劇的に変わりつつあることの共通理解を図った。現在求められる情報活用能力について押さえた上で、1人1台端末での実践例からポイント等を考察してもらった。

    第5回:諸外国におけるICT活用のあり方
     まず、米国におけるICT活用の実践例としてプロジェクトの活動において必要な状況の中で用いるものを紹介した。

    Thinkering Studio: Supporting Self-Directed Learning

     その後、「倉敷宣言」で目指されたICT活用のあり方とデジタル・シティズンシップについて共通理解を図った。前提となるシチズンシップを踏まえた上で、デジタル・シチズンシップの定義や構成要素を確認した。その上で、デジタル・シチズンシップの教材を視聴してもらい、求められる「シティズンシップ」のあり方や教材の構成について考察してもらった

    12年生:僕らは市民のコミュニケーター

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    (2023.03.10) 島根県教育センターとの情報交換会

     3/10の9時半から約2時間、島根県教育センターとの情報交換会が山陰教員研修センター(SaTeLa)で開催された。
     教育委員会として行っている志願者確保の取組、若手教員の研修・支援、高大接続事業、教員免許状更新講習の後継事業等、様々な議題について共通理解を図る重要な機会となった。
     後継講習として、「教育評価の新たな地平」(4コマ)を継続して開講することになった。また、「令和の日本型学校教育の実現を目指した探究学習指導・STEAM教育のノウハウ(基礎編)」(1コマ)を担当することになった。

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    【告知】『ユネスコ・教育を再考する』翻訳刊行記念シンポジウム(2023.03.30)

     昨年出版された『ユネスコ・教育を再考する』の刊行を記念するイベントとして、日本教師教育学会国際研究交流部シンポジウム「なぜ今か、何を“再考”するのか―新たなディスコースの創造とその参照軸」が3/30にオンラインで開催される。

     ”Rethinking Education”の翻訳にあたっては、翻訳チーム全体での複数回の議論に加え、今回登壇するメンバーで、2回のWERAの発表・議論、様々な機会でキーワードの検討等を重ねてきた。そういった意味で、『ユネスコ・教育を再考する』の刊行は1つの到達点であり、また日本におけるその理念を発信していくスタートラインでもある。

     オンライン開催ということもあり、様々な方に「なぜ今か、何を“再考”するのか」を共に考えてもらう機会を得てもらいたいと願っている。

     申込については、以下のURLから行ってもらいたい。

     https://forms.gle/ayGSE8DtZZY9Yb

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    (2023.03.03) ゼミプロジェクト成果報告会

     3/3の9時半から個別化教育に関するゼミプロジェクトに関する成果報告会を開催した。Zoomを用いて、協力先のX小学校の校長に対して10月に行った実践と成果についてJAET全国大会の発表を中心に報告した。ゼミ生は、4年生2名、3年生3名(1名オンライン)とゼミ内定者3名が参加した。X小学校校長から発表に対して今後の実践や方向性に対して的確なコメントを頂いた。音声トラブルが若干あったが、ゼミ内定者3名も参加することができ、貴重な機会を設定して頂いたことに大変感謝している。

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    (2023.03.01-02) 島根県立大学松江キャンパス集中講義

     3/1と3/2の2日間、島根県立大学松江キャンパスで「教育方法論(幼・小)」の集中講義5コマを担当した。2019年の集中講義は対面での実施だったが、2020年と2021年についてはオンデマンド型で実施したため、久々に島根県立大学松江キャンパスを訪れる形になった。
     講義内容は以下の通りである。主にインストラクショナル・デザインの内容を扱うことにした。

    (03/01)
    第1回:授業の設計と計画
     教育課程と指導計画との関係性を押さえた上で、カリキュラムや授業の設計の基盤となる「タイラーの原理」について確認した。そして、目標設定にあたって必要となる視点や目標達成を考えるための前提条件の確認等を押さえた。

    第2回:課題分析の意義と方法、教育評価
     IDに関する目標設定を押さえた上で、3つの課題分析を紹介し、手順分析については実際にワークで取り組んだ。
     教育評価については5W1Hの視点について確認した上で、評価方法の多様性について押さえた。パフォーマンス評価の話については、ルーブリックの作成に焦点化した。

    (03/02)
    第3回:学習指導の方法・技術
     他の担当者が学習指導について扱っていたこともあり、興味と動機づけという基盤的なところをまず確認した。それを踏まえた上で、指導の手がかりとしてARCSモデルについて紹介した。

    第4回:情報活用能力の育成とICT活用
     GIGAスクール構想にいたる情報教育・ICT活用の推進を概説した上で、GIGAスクール構想で求められる方向性について確認した。また、教育の情報化に関するデータから、学校現場が劇的に変わりつつあることの共通理解を図った。現在求められる情報活用能力について押さえた上で、1人1台端末での実践例からポイント等を考察してもらった。

    第5回:諸外国におけるICT活用のあり方
     まず、米国におけるICT活用の実践例としてプロジェクトの活動において必要な状況の中で用いるものを紹介した。

    Thinkering Studio: Supporting Self-Directed Learning

     その後、「倉敷宣言」で目指されたICT活用のあり方とデジタル・シティズンシップについて共通理解を図った。前提となるシチズンシップを踏まえた上で、デジタル・シチズンシップの定義や構成要素を確認した。その上で、デジタル・シチズンシップの教材を視聴してもらい、求められる「シティズンシップ」のあり方や教材の構成について考察してもらった

    12年生:僕らは市民のコミュニケーター

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    (2023.02.14) 第2回島根大学教育学部教育活動評価委員会

     2/14の13時から16時まで令和4年度 第2回島根大学教育学部教育活動評価委員会が開催された。評価委員として、教育委員会関係者、現職校長、地元関連企業等に参加して頂いた。
     本会の趣旨説明の後、会の前半では、2年生4人の学生がこれまでの学習とカリキュラム等の課題についてプレゼンを行い、評価委員とのディスカッションを行う形であった。
     その後、各観点等について話題提供を行い、評価委員との質疑応答を行った。私は、教務・学生支援担当副学部長として、現在議論している令和6年度のカリキュラムの基盤となる「教師力」の改訂について話題提供を行った。

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    (2023.02.11) 卒業論文発表会

     2/11の午前中、専攻の卒業論文発表会がTeamsで開催された。 対面開催も検討してきたが、今年度もTeamsでの開催となった。毎年のことだが、3名のゼミ生については冒頭見に行くだけで、口頭試問で聞いていない他ゼミ生の発表を回った。
     今回は、発表ごとではなく、4名程度発表が終わってから総合討議的に質疑を行う形であった。質疑については、チャットで投げかけ、それに答える形であった。座長の3年生がチャットのコメントを取り上げながら上手く進めてくれていたので、非常によい形であったと思う。

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    (2023.02.03) 専攻別体験「読書会」成果発表会

     2/3は、専攻別体験「読書会」成果発表会であった。 「読書会」は、1・2年生でグループに分かれ、1冊の本を中心にディスカッションを進めていく活動である。一昨年度と昨年度は、成果発表会がTeamsでのオンライン開催となったが、今年度は対面での実施に切り替わった。運営についてもこれまで並行セッションの形を取ってきたが、2つの会場にわけて、5班が発表・質疑を行うという形態で進められた。
     担当班は、アクティブ・ラーニングを最初のテーマに設定していたが、より焦点化するために『大人を本気にさせる子どもたち』をテーマにプロジェクト・ベースで、社会とつながりながら展開する書籍を読みながら議論を進めてきた。
     午後からスタートし、18時過ぎまで成果発表会が続いて、学生も大変だっただろうが、各班それぞれ見どころがあり、貴重な学習機会となったのは間違いないだろう。

     

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