(2023.09.01) 大阪公立大学「教育メディア論」集中講義第3日目

 大阪公立大学集中講義「教育メディア論」第3日目の記録である。

第11回 課題発表とプログラミングまとめ
 前日に取り組んでもらったScratchの課題を各自発表してもらった(写真1)。本来じっくり取り組んでもらうのが望ましいが、限られた時間にもかかわらずそれぞれ工夫点が見られる作品となっていた。
 プログラミングのまとめとしては、Telloの飛行の様子の動画(Scratchでプログラミング)、『Scratchではじめる機械学習』に掲載されているジャンケンゲームの動画を踏まえ、これらのScratchの拡張可能性を確認した。それを踏まえつつ、自動運転と機械学習の話を締めくくりとした。最後にプログラミングの可能性を考えてもらうためにTEDのプレゼンを視聴してもらった。

A delightful way to teach kids about computers | Linda Liukas – YouTube

第12回 ゲームと教育
 Mentimeterでこれまで経験してきたゲームを共有してもらってから、ゲームの有する学習可能性について確認した。それを理解するため、『デジタル社会の学びのかたち』で取り上げられたゲームを中心に実際のゲームと学習につながる点を紹介した。
 特にMinecraftが米国等でも数年前から授業で実際に用いられているが、プログラミングを活用した動画や米国における9年前の取り組みを動画で視聴したりした。

Using Minecraft as an Educational Tool – YouTube

 MacGonigalのプレゼンを視聴した上で、ゲームが社会を変革することにつながる可能性を改めて確認した上で、諸外国で取り組まれる市民科学におけるゲーム活用、社会的問題解決とゲームの話題を取り上げた。そのような視点を踏まえて、具体的なゲームとしてどのような構想ができるかをグループでディスカッションしてもらった。

Jane McGonigal: Gaming can make a better world | TED Talk

第13・14回 インターネット社会における教育のあり方
 ここでは、Khan AcademyとMOOCsを取り上げた。いずれもTEDのプレゼンを視聴して、それぞれのイメージをもってもらった。

ビデオによる教育の再発明
ダフニー・コラー 「オンライン教育が教えてくれること」

 体系的に網羅された動画コンテンツがあることによって教室がどのように変わるか、優れた動画コンテンツが生まれることで授業があまり上手くない教師がいた場合にどのような実践を考えればよいかをグループでディスカッションしてもらった。

第15回 21世紀型スキル
 エンゲストロームの『拡張による学習』に指摘されていたように「道具の貧困」「文脈から切り離された学習」は諸外国においても問題となっていた。それらは「真正の学習」「真正の評価」の提起によって転換されてきた。そのような背景を押さえつつ、本授業では21世紀型スキルを取り上げた。
 最後の締めくくりは、Jamboardを活用し、21世紀型スキルを実現するための学習活動と学習環境・パートナーシップをグループで検討してもらった。

 2年間遠隔で授業を担当してきたが、やはり対面でできる強みを実感する3日間であった。グループでのディスカッション、制作活動等はオンラインでは代替できない部分である。これまでも重視してきたが、「メディアを活用した教育のあり方」、「メディアが教育を変えていくこれまでとこれから」そして、社会的包摂、シチズンシップ、公平性といった理念、メディアを活用した創造と表現の可能性を日本の文脈では語られない形で学ぶことができた3日間だっただろう。

 

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(2023.08.31) 大阪公立大学「教育メディア論」集中講義第2日目

 大阪公立大学「教育メディア論」集中講義2日目の記録である。

第6回 メディア・リテラシー  
 メディア・リテラシーの定義からメディアから発信される情報の「批判的な読み解き」とメディアを用いた「創造的な表現・発信」が両輪であることを押さえた。前者に関わって「メディア決定要因」を基に、企業としてのマスメディア、経済的決定要因等を学んだ。   
 今年度は、生成AIのテーマが大きな話題となっているため、ChatGPTとBingAI、そして画像生成のAIを実例として紹介した。このような時代が到来する中で、いかにメディアからの情報を批判的に検討すべきかについてグループで検討してもらった。ただ、このテーマについては、まだ議論するには情報が十分でなかったので今後の課題となった。

第7回 メディア・リテラシーの視点を踏まえた制作活動  
 今年度も対面授業で継続して行ってきた映像制作の活動に取り組んだ。まず、「アッ!とメディア」の「送り手の意図を伝える~編集~」を視聴して、グループで課題に取り組んだ。メディア・リテラシーにおける「創造的に表現する」をテーマとして設定したものだった。

第8回 メディア・リテラシーの視点を踏まえた作品発表会(第7回の制作時間に一部充当)   
 各グループ作成した作品をそれぞれ視聴し、ポイントを評価してもらった。短い時間ではあったが、2グループともそれぞれに工夫点が見られる作品ができていた。

第9回 プログラミング教育  
 2017年小学校学習指導要領改訂でプログラミング教育が取り上げられたことを紹介した上で、算数・理科と非常に限定的になっていることを共通理解した。それからWhy!?プログラミングを視聴し、Scratchのイメージや問題解決の捉え方を確認した。そして、Scratchでのプログラミングのイメージをもってもらうためにデモとして紹介した。

第10回 プログラミングの実践  
 第10回は各自でScratchのプログラミングに取り組んでもらったが、「創造性と試行錯誤」をテーマに掲げた。教科に無理矢理当てはめることはプログラミングの本質からかけ離れたものだからだ。

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(2023.08.30) 大阪公立大学「教育メディア論」集中講義第1日目

 昨年度に引き続き、対面授業で大阪公立大学(大阪市立大学から改組)の集中講義「教育メディア論」を担当した。2013年度から担当しているため、今回が10年目の年となる。
 3日間の受講者は8人であり、2グループの編成で基本的に進めた(グループは1日ごとにチェンジ)。

第1回 情報とメディア
 自己紹介、シラバスの確認の後、それぞれの言葉を自分なりに考えてもらってから、それぞれの定義を確認した。その後、「メディア」になる体験として、伝達ゲームを行ってもらった。そして、メディアを巡る歴史的変遷(アルタミラから19世紀・20世紀まで)を象徴的な部分を捉えながら確認した。

第2回 情報教育とICT活用
 情報教育とICT活用の用語を押さえながら、1970年代からおよそ10年区切りで情報教育の意味の変遷を辿っていった。現在の情報活用能力として求められているものを確認した上で、その内容についてワークで深めた。

第3回 1人1台環境の到来による学習の変化
 日本におけるGIGAスクール構想以前からBYODの発想が諸外国では広がっていた。その事例を視聴し、学習環境等について考察してもらった。
 GIGAスクール構想等の方向性を確認した上で、1人1台端末環境における一斉学習、個別学習、協働学習という基本的な枠組みを押さえた。教室の壁を超えてつながるにはどこが望ましいか、それによって何が得られるかをグループで検討してもらった。最後に1人1台の実戦を継続的に行っている学校の事例を視聴してもらい、その可能性についてグループで協議した。

第4回 国際的な文脈における ICT 活用の理念と実践
 まず「富山・金沢宣言
」を紐解きながら、「包摂的かつ公平で質の高い教育」を前提としたICT活用の方向性を確認した。その上で、経済的に厳しい地域であっても創造的な実践で問題解決を図る事例を紹介し、日本における実践のあり方について検討してもらった。

Project Learning: Expeditions in Portland, Maine

 ICT活用のあり方として、OLPC(One Laptop per Child)の理念と実践例を紹介した。

Nicholas Negroponte takes OLPC to Colombia – YouTube

第5回 情報モラルからデジタル・シチズンシップへ
 情報モラルの定義、学習指導要領の位置づけ等を踏まえながら、文部科学省チャンネルにある教材を視聴した(当然トラブル型)。
 前提となるシチズンシップを踏まえた上で、デジタル・シチズンシップの定義や構成要素を確認した。その上で、デジタル・シチズンシップの教材2つを視聴してもらい、それと日本の教材との対比で考えてもらった。

6年 10代の声・ネット上での自分自身の表現 – YouTube
12年生:僕らは市民のコミュニケーター – YouTube

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(2023.08.28) 学校教育実践研究II模擬授業発表会

 9月からスタートする学校教育実習IV(他大学で本実習といわれる中核的実習)に向けて小学校教育専攻では毎年6グループに分かれて模擬授業発表会を行っている(学生は特別支援教育専攻も含む)。今年度については、家庭科と算数科の学生計10名の担当となった。
 8/28の1コマから3コマの時間帯で1人約30分の時間で、模擬授業の実践と自評・コメントの時間もとって行った(コメントについてはフォームで全員が入力する方向で運営)。残念ながら2名が当日欠席となってしまったが、それぞれの授業者の構想や授業の工夫などを相互に学べる重要な機会となった(授業とその後の協議については全て録画し、欠席者については後日視聴してもらった)。

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(2023.08.24) 附属幼稚園における研究協議

 10月に附属学校園全体の会として、未来創造科研修会を開催することが決定している。

 第二次案内

 今年度については、附属幼稚園の公開研究会は行わず、こちらの会に一本化することになっている。そこで、幼稚園の保育をどのように学校園全体の研修会に位置づけるかについて11時から約1時間ほど議論を行った。
 概ね方向性は見えてきたが、幼稚園と前期課程1年生を合わせて研究協議を行うため、9月に両者を交えた意見交換会を設定することが望ましいという話になった。

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(2023.08.22) 米子西高等学校の訪問対応

 米子西高等学校は、「総合的な探究の時間」に係る島根大学研究室訪問を毎年行っており、今年度は2年生9班27名が来訪した。そのうち、ICT活用に関するテーマを設定している1グループ2名(当日1名欠席)と約1時間半ほど話題提供と意見交換を行った。話題提供にあたっては、彼らの経験を聞きながら、どのような視点で探究が深められそうかを考えながら進めていった。

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(2023.08.13) カリキュラム研究会

 8/13に大阪教育大学天王寺キャンパスでカリキュラム研究会が開催された。
 2011年頃から定期的に開催されていたが、しばらく中断していた研究会となる。
 13時から17時まで各人が「カリキュラム」をテーマとする話題を持ち寄り、発表・議論を行った。最も多かったのが、学部・大学院における実践報告であった。その他にも学習指導要領を巡る議論、カリキュラム・マネジメントに関する教員研修、教職大学院の実務家教員の研究力量を向上させるプログラム開発などのテーマがあった。

 私は、「教員志望学生のカリキュラム開発力量を向上させるための『総合的な学習の時間指導法』の提案」と題して授業の取り組みを紹介した(参考:シラバス)。戦前からの総合学習の歴史を踏まえつつ、総合的な学習の時間が導入され、その後様々な議論があったことを授業では押さえている。総合的な学習の時間の指導案を作成するにあたって、米国の『PBL』をモデルに具体的なプロセスを学習している。もちろん、それと日本の実践とを接続するために、好事例の紹介、実践者による講演を盛り込んでいる。質疑では、「PBL」のプロセスを全面的に押し出すことについて、実践を創造する「楽しさ」を体験できる内容になっているかどうかのご意見も頂いた。

  「教育課程論」はどうあるべきか、カリキュラム・マネジメントの研修をどのように進めていくか、等様々な視点で考えることができた研究会であった。

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(2023.08.07) しまだい学校教員研修「教育評価の新たな地平」

 教員免許状更新講習の後継講習として、今年度より「しまだい学校教員研修」がスタートした。島根県、鳥取県両県の教員については、研修情報システム(研修履歴の管理)に登録されるものである。
 8/7の午前・午後と山陰教員研修センターにて、「教育評価の新たな地平」の講習を担当した。「教育評価の新たな地平」については、2013年度から継続的に開講してきたプログラムである。オンデマンド受講期間もあり、内容をリニューアルしながら現在の形に整理してきた。主な講習内容は以下の通りである。

1コマ:教育評価の意義と教育評価の歴史的変遷
 そもそも教育評価とは何かを確認した上で、何のために評価を行うのか、相対評価と絶対評価の考えたを説明した。その視点をもって、戦後から現在に至るまでの社会事象や教育として期待されていたものが評価に大きな影響を与えてきたことを概説した。

2コマ:評価方法の多様性①
 評価をデザインする視点として、5W1Hを取り上げた。6つの視点について丁寧に確認しつつ、診断的評価における「レディネス」の把握をどう工夫するか、校外学習において事前にどのようなしかけをすることによってより意味ある評価になるかをグループで検討してもらった。

3コマ:評価方法の多様性②
 評価方法に関する視点として「真正の評価」の登場背景とそこで目指されたものについて概説した。日本では、「真正」についての議論よりも方法としてのポートフォリオ評価やパフォーマンス評価が積極的に受容されてきたことを押さえた上で、それぞれのポイントについて確認した。パフォーマンスを評価するためのアプローチとして、ルーブリックを取り上げ、ある生徒のプレゼンを視聴した後、生徒が自己改善できるためのルーブリックをグループで考案してもらった。

4コマ:新しい学習指導要領における評価のあり方/諸外国における評価のあり方
 各国の教育改革、新しい学習指導要領の方向性を確認し、その議論が2017年学習指導要領改訂に影響を与えてきたことを押さえた。特にカリキュラム・マネジメントにおいて「評価」が重要になることを紹介してから、「対話的な学び」を学校全体で推進するための評価計画のあり方について議論する活動に取り組んだ。
 最後に、諸外国では「真正の評価」を前提として、学校全体のカリキュラムが大きく変わってきたHigh Tech Highの事例等を紹介しつつ、指導と評価の総合的な変革が今後も求められることを提案し締めくくった。

 残念ながら、他の講習と重なってか計6名と少ない受講者だった。人数は少なかったが、充実した内容にはなっただろう。多くの受講者はポジティブなコメントを頂いたが、あまりにギャップが大きいというコメントも頂いた。ただ、この基本がなかなかできていない現場が多いので、学ぶ機会は保障せねばならないと考えている。

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(2023.08.01) オープンキャンパス

 8/1-3の3日間にわたってオープンキャンパスが開催された。教育学部は8/1の開催となった。
 昨年度と同様、午前、午後の同一内容2回開催で、事前申込制の形が取られた。教育学部は、それぞれ150名が定員だったが、7月後半には予約定員になったため申込が締め切られた。
 30分程度、学部長挨拶、教育学部のカリキュラムの特色、入試の概要を紹介する全体会の後、約50分程度各専攻に分かれて専攻での取り組みや学生の学びについて知るという2部構成で運営された。全体会では、教務・学生支援委員会委員長として、学部のカリキュラムの特色について15分プレゼンをした。グローバル教育等、他大学にはない魅力的なものもあるため、それらが伝わるように心がけた。
 今回のオープンキャンパスによって受験生の選択肢の1つとなってもらうことを心から願っている。

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(2023.07.27-28)教育職員免許法認定講習

 7/27と7/28にテクノアークしまねにて教育職員免許法認定講習「教育課程の意義及び編成の方法」計8コマ分を担当した。高校籍の方が多かったが、保育所・小学校・中学校と合わせて12名が受講した。9名が県外の方であり、最も遠方からは青森県の方が受講して頂いた。
 学部の「教育課程論」と大学院の複数科目で扱ってきた内容を再編成して以下の2日間の主な内容を構成した。

(第1日目)
第1回 教育課程とカリキュラム
第2回 カリキュラム開発の理論
第3回 教育課程と学習評価
第4回 真正の評価とパフォーマンス評価

(第2日目)
第5回 学校間接続
第6回 総合的な学習/探究の時間のカリキュラム開発
第7回 キャリア教育のカリキュラム開発
第8回 カリキュラム・マネジメントの理論と実践

 毎時間ペアワークやグループワークを取り入れながら展開していったが、受講者全員が積極的に取り組んでくれたため非常に充実した2日間となった。
 さらに1日で取り組める内容にしてしまだい学校教員研修で提供していく方向でも今後考えていきたい。

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