(2020.1.25, 2.3, 2.5) 特別活動指導論集中講義

 集中講義「特別活動指導論」を3日間にわたって担当した。今年度10月にご担当頂ける先生が着任したが、もともと担当する予定にしていたので今回については私が14回を担当した。昨年度「特別活動指導論(初等)」を担当しており、それがベースとなったが、昨年度は10数名に対して、今年度は140名と約10倍になったこと、内容も相当バージョンアップする形にしたので準備に相当なエネルギーがかかった。

 1/25の土曜日1コマからスタートしたので、人数が少ないグループがいくつかあったり、履修登録できていなかった学生がいたりしたためグループ編成から苦戦した。未登録者を人数の少ないグループに配当したり、2グループを併せたりして15分ぐらいかかった。それも想定して1コマの内容をかなり減らしていたのでつつがなく乗り切った。
 ただ、そのタイミングで交流で来られているアフリカの2名の先生(+窓口の人間科学部の先生)の視察もあったが、もう少しスムーズなところを見てもらいたかったところである。

(1/25)第1回:特別活動とは何か
 「特別活動」のイメージを確認してから、本講義の趣旨説明を行った。
 特別活動の指導にあたって必要となるグループ活動のポイント、ソーシャルスキルを確認し、それをその後の活動に応用してもらった。
 その後、教育課程における位置づけ、特別活動の内容構成について確認した。それを踏まえた上で、各人の経験を振り返ってもらった。グループでその異同を確認する課題に取り組んで1コマ目を閉じた。

第2回:特別活動の歴史的変遷
 明治期における運動会、遠足、修学旅行の登場と変化について押さえた。戦時中の運動会に関する演目の資料、当時のVTRを視聴しイメージを持ってもらった。それを踏まえて、現代において学校行事を行うことは果たしてどうなのかという投げかけを行った。
 引き続き、戦後の新しい学習指導要領(試案)における「自由研究」について説明し、小学校における3つの時期(1947、1951、1958)の指導要領の文面を読み、それらの意味づけの変化を考察してもらった。特に1951年の「民主主義」を基盤とし、児童会に大きな裁量が与えられていた部分に着目して特別活動のあり方を考えてもらいたかった。
 残り時間わずかになったが、1968年「特別活動」成立以降の方針を押さえた(1958年の改訂で基本方針はほぼ確立している)。

第3回:特別活動の目標と主体的・対話的で深い学び
 2017年に改訂された小・中学校学習指導要領における特別活動の目標、そして資質・能力の育成についてまず確認した。その中で、特別活動における「見方・考え方」を確認し、学習を引き出すための「課題」をどう設定するのかについてグループで考えてもらった(そもそも課題を解決しようと思わなければ学習は生じない)。
 そして、資質・能力の育成を実現するための学級や学校の方向性について検討した。
最後に「主体的・対話的で深い学び」の視点を押さえて、各内容構成でそれを実現していくことが求められていることを確認した。

第4回:学校全体の教育計画における特別活動の意義とその方向性
 35時間しかないという点を強調した上で、3コマの内容を実現するためにはそもそものあり方も考えねばならない(行事偏重では実現できない)。
 そして、「いじめを未然に防ぐ」という文面を実現する学級のあり方、生徒の「自治的活動」をどこまで認めるかについての議論を各グループで検討してもらった。後者については、特に現在(以前から)の「管理主義」的な発想からはなかなか出てこない点だったので、様々な可能性を検討してもらった。

(2/3) 第5回:特別活動の指導原理
 特別活動の指導原理として、協同学習の基盤に置かれている「市民的価値観」、(教師、児童・生徒の)リーダーシップにおけるPM理論とその実践例、チームワークの理論を指導原理として確認した。チームワークの理論については、「建設的な議論」を学級で行うための標語を生み出すというグループワークに取り組んだ。

第6回:合意形成の理論的・実践的理解
 特別活動のキーワードである「合意形成」について共通理解を図った。まず「合意」の定義を広義・狭義と確認し、合意形成のプロセスを紹介した。それに関連する集団的意思決定の対象と集団的意思決定の引き起こす問題点を押さえた。最後は、グループで合意形成に関するワーク(藤原 2007)に取り組んだ。

第7回:学級活動の理念と実践
 学級活動について、まず目標と資質・能力の育成、学習プロセスを確認した。
 そして、中学校の学級活動の内容を紹介し、その問題点についてグループで検討してもらった。単純に内容が盛り込まれすぎているという点に留まらず、「男女」という枠組み、「異性」との恋愛といった捉え方が基盤となっており、LGBTが社会的にクローズアップされているにも関わらずアップデートされていない課題がある。
 最後に、「自治を目指す指導」(白松 2017)を題材に、「種まき」(機会や場面の保障等)「水やり」(ファシリテーションや介入)の具体例をグループで検討してもらった。

第8回:児童会・生徒会活動の理念と実践
 まず過去の経験を振り返ってもらい、生徒会に関する新聞記事を読み、それ過去の経験とをつないでもらった。そして、目標、資質・能力の育成、学習プロセスを確認した。「自治的組織」と「合意形成」がキーワードとしてここでも確認できた。
 児童会・生徒会活動の組織について確認した上で、「自治的活動」が保障されていない課題を押さえた。「年間指導計画」の問題、校内における組織図の観点を情報提供しつつ、「自治」を目指す児童会・生徒会活動を保障するために必要な環境整備をグループで考えてもらった。

第9回:学校行事の批判的検討
 最後に学校行事を取り上げたが、これまでの構成とは異なり、「自治的活動」「合意形成」等は極めて弱い領域となっている。そこで、「市民的価値観」「合意形成」を実現するための学校行事を新たに創造してもらうワークに取り組んでもらった。

(2/5)  第10回:クラブ活動の理念と実践
 クラブ活動は、「同好の仲間で」「共通の興味・関心を追求する活動」であるため、「新たに作りたいクラブを提案する」ことから学習活動がスタートする、という学習指導要領の共通理解を図った(学生の経験でも大半は決まったクラブから選ぶとなっている)。
 そこで、各自がやりたい(やりたかった)クラブを最大3つ挙げてもらい、グループで共有し、実現の体制整備等についてグループで検討してもらった(本来のクラブ活動に対する教師の対応についての学習)。学習指導要領に書いている通りの実践があまりになされていないのが「クラブ活動」である。

第11回:特別活動における評価
 まず評価を考えるための5W1Hの視点等を確認した上で、「解説」に1ページのみ記されているポイントを確認した。そこに記される「児童・生徒のよさ」とは何かをグループでディスカッションした。
 そして、ある実践のVTRを視聴し、評価内容と方法を考えるワークに取り組んだ。

第12回:「市民としての学習」を実現する特別活動の創造
 まず、シチズンシップ教育についての確認と国内外の事例から特別活動の可能性を再検討した。「特別活動」の基盤となる「自治的活動」や「合意形成」を考えるためには「市民としての学習」をテーマとしたシチズンシップ教育を扱う以外にない。
 まず、国内の事例として様々なステークホルダーが関わる「フューチャーサーチ」(津村 2012)をまず取り上げた。それから「僕らがちんじょうしたわけ」に関する記事を読み、児童のアクションが行政を動かした話題について考察した(学校が関与できていない課題点)。
 それから、国外の事例として米国の生徒会に関する動画を紹介した。もう一つの「処方薬問題」に関する高校生たちのアクションについては時間的に紹介できなかった。
 最後に英国のシチズンシップ教育に関する事例から児童会・生徒会が関わるものを取り上げ、グループで検討してもらった。そこには、地域や社会を巻き込むアクションが認められており、それを周りの大人たちが認め、協働していた。

第13回:新しい特別活動の創造
 前時に紹介した「フューチャーサーチ」の一部を取り入れたミクロ・フューチャーサーチ(仮称)に取り組んだ。これまでの学習内容を約20分でリフレクションし、グループで30分間、特別活動の「理想的なシナリオ」(理想像の言語化)と「コモン・グラウンドの策定」(特別活動が目指す方針のスローガン)を検討した。
 最後は、10分2セッションのグループ間共有。他グループの成果を学び合う機会を設定し、自分たちのグループと他のグループの成果物を共有・比較した。短い時間だったがクライマックスとして盛り上がりながら終えることができた。
 最後にグループでのリフレクション。これで2グループ目の活動も終えた。

第14回:ふり返り課題(総括)
 思った以上に時間がかかる課題を設定してしまったため、ギリギリまで格闘している学生が多かった。

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