業績一覧については、院生時代・前任校のものも含んでいるが、2011年以降のものが着任以降のものである。【業績一覧】
大別すると、①教育実習に関する研究、②教員養成・現職教育における学習プログラム開発、③教師のレジリエンスに関する研究、④諸外国のディスコースを踏まえた発信、となるだろう。
①については、着任後、4年間、学校教育体験領域専門部会(実習部)として活動してきたことが大きいだろう。院生時代からの研究と実践をつなぎながら取り組みを進めることができた、日本教育工学会論文誌、教育工学選書、日本教育大学協会研究集会等で研究成果を発信することにつながった。
②については、まず着手したのが、教員志望学生が「カリキュラム開発」を学ぶプログラムである。教育実習や模擬授業等では教科書を中心とした指導については学ぶことができるが、総合的な学習の時間等の地域を題材とした0ベースのカリキュラムを構想することを学ぶ機会はほとんどない。科学研究費補助金若手研究(B)として採択された「教員志望学生のカリキュラム開発力量に資するワークブックの開発」に基づき、全国の大学で開講されている「教育課程論」の実態調査や講義担当者や現職教員に対するインタビュー調査を踏まえ、教員志望学生のカリキュラム開発力量を向上させるプログラムの実践及び評価、そしてワークブックの開発まで進めてきた。その成果は、日本教育工学会研究奨励賞の受賞にもつながった。
続いて、「学習評価」を学ぶ機会の創出である。日本においては、教員養成、現職教育を通じて学習評価を学ぶ機会が極めて少ない。それを学ぶ場として、教員養成段階では授業科目で、現職教員段階では教員免許状更新講習で学習機会の保障を目指した。前者については、日本教育工学会論文誌に掲載され、2017年の教育心理学年報、2019年の日本教育工学会論文誌の展望論文で特徴ある論文として紹介された。後者については、「島根大学『若手教員に対する支援』」に基づき研究として進め、2016年度島根大学若手研究者表彰にもつながっている。
③については、2017年度~2019年度の科学研究費補助金基盤研究(C)「日本における教師のレジリエンス形成に寄与するプログラムの開発」、2020年度から科学研究費補助金基盤研究(C)「日本における教師のレジリエンス形成に寄与するオンライン学習プログラムの開発」の採択を受け、研究を進めている。教員志望学生、現職教員のレジリエンス形成に関するプログラム開発に取り組んでいる。
教師のレジリエンスに関する諸研究、若手教師、中堅・ベテラン教師に対するインタビュー調査、オーストラリアの研究者が開発したオンライン学習プログラムであるBRiTEを参考にしながら、教員志望学生向けのプログラムの実践と評価、現職教育向けのプログラムと評価として成果を公表してきた。
2017年度採択科研の集大成が『教師のレジリエンスを高めるフレームワーク―柔軟な問題解決者となるための5つの視点』(北大路書房)である。BRiTEを基盤にしつつも、日本の文脈において、教師がどのように学んでいくべきか、教師の仕事として今後どのような視点で環境を考えていくべきかをまとめたものとなる。
④については、主に翻訳を通じて取り組みを進めてきた。その中でも編訳者として公刊した『パワフル・ラーニング―社会に開かれた学びと理解をつくる―』は、最も力を入れたものである。学習とは何か、真正な学習・真正な評価の具体的なモデル、PBL等社会の中で各教科や学問を学ぶアプローチを解き明かしたものである。「主体的・対話的で深い学び」「アクティブ・ラーニング」が話題となっていた時期に問題提起した一書であるが、残念ながらあまり世に知られることはなかった。編訳者として、まだまだ発信を続けていかねばならないと強く思っている。
一方で分担として携わった『デジタル社会の学びのかたち』(2012年)と『デジタル社会の学びのかたちVer.2』(2020年)、そして『21世紀型スキル』(2014年)については、いずれも着目を集めている。これらも基本的な立場は同じである。『21世紀型スキル』については、担当したオーストラリアの取り組みが「真正の学習」「(専門的な)探究」を目指していたものだった。また、『デジタル社会の学びのかたち』両バージョンについても、ゲームやプログラミングを通じての学び等、学習そのもののイメージを変えることにつながっている。特にVer.2では、自分の分担箇所ではないが、「市民科学」について明確に言及されていることは重要だと考えている(タンパク質構造計算ゲームFoldit等)。子どもであっても大人であっても科学にアクセスでき、そこで真正に学ぶという発想に立ったものだからである。
10年の研究成果としては、ある程度できたという面とまだまだできたという面それぞれを感じている。ひとまず振り返った上で、次の一歩を踏み出していかねばならない。
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