(2021.08.15) 教育学部と専攻のカリキュラムの理念(1)

 学部・専攻のカリキュラムの基本的な理念は、元同僚の百合田さん(現教職員支援機構)が確立してきたものだ。2011年に着任した段階で、学部共通科目としての「教職ガイダンス」(現・教職論)、「教育原論」、そして専攻の科目として「初等教育実践基礎II」(論文講読,現・初等教育実践基礎B)、「初等教育実践基礎IV」(外書講読,新カリキュラムで閉講)という授業で「社会正義」や「公正性」を理念とした実践に着手されていた。また、私の着任後には、専攻の体験活動としては、3・4年生の優秀学生をテューターとして任命し、論文講読等のサポートを行う「テューター活動」をリードしてもらった。 

 私自身にもともとそういうマインドがあったこと、自身の研究ベースが海外の教師教育であったことが幸いしてか、その理念を継承・発展させることに注力してきた。
 専攻の1・2年生がグループとなって1冊の本を議論しながら進める「読書会」も当初、発表が劇ばかりだったが、読書会担当になってから、2年生の総括と共に研究成果を発表する形式に移行させていった(宿泊がなくなったり、2日が1日になったり、中間発表を取り入れたり色々変化はあった)。

 自身が主担当である「教育課程論」は、着任当初から諸テーマ、歴史的変遷を踏まえながら教育課程・カリキュラムに関する批判的検討を行う内容で行ってきた。昨年度は、オンデマンド授業になったことから、毎回約10ページ分の授業資料を作成し、それぞれの内容を深めてきた。

 https://gkm2019-sy.shimane-u.ac.jp/syllabusHtml/2021/02/02_M522402_ja_JP.html

 1年次開講の主・副専攻共通科目「学校教育実践学原論」は、3人の教員が分担して行うだけの科目だったが、前半に教育に関する問題を検討した上で、新たな可能性を言語化し、全員がプレゼンする形式に組み替えた(数年は子どもの権利をテーマとしている)。

 2年次の論文講読は、現在5人の担当者でクラス分けを行って進めている。どの程度、各クラスの議論が進んでいるかまでは掌握しきれていないが、少なくとも共通に読んでいる課題論文で一定の方向性はつかめるようになっている。

 https://gkm2019-sy.shimane-u.ac.jp/syllabusHtml/2021/02/02_M536621_ja_JP.html

自身のクラスは、イリッチ『脱学校の社会』、アップル・ビーンの『デモクラティック・スクール』とさらに深める形で進めている。また、着任当初は、情報活用に関する科目だった「初等教育実践基礎III(現・初等教育実践基礎C)」は、教科系の論文講読に改訂されたことで深く議論するカリキュラムの構成になっている(ただし、学部カリキュラム改訂で教科教育に関する時間減少に応えるというニーズから実践ベースになりつつ現状にある)

 3年次の「授業実践研究」は、もともと模擬授業を1人1人が行う科目であったが、5・6年のうちに、2年次の初等教育実践基礎B・Cで形成された批判的問いを踏まえた新たな教育実践を提案する模擬授業に転換された。 

 一方で、教員養成段階において、教職志向性を高めることや教員採用率を高めるということが政策的にも求められる状況にある。ともすれば、教職の魅力といったものばかりを全面に打ち出そうとすることになりかねない。だが、教員養成学部として、現場に立つ教員を養成するということは前提である。その1人1人の教師が現場に立ったときにどのような実践を具現化するかが真に問われるはずである。被教育体験の吟味や問い直しがなければ、現状肯定の縮小再生産にしかなり得ないだろう。
 諸外国の教員養成においては、上記に述べたものよりもより明確に「社会正義」を学ぶカリキュラムを基本としている。そういった点から見ても、島根大学教育学部、また小学校教育専攻のカリキュラムはそれに合致したものだと言えるだろう。

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